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ケンジの解離の事情 <知られることのない気持ち>

「男らしく」振る舞い続けなければならなかった学生時代が過ぎる頃、ケンジは音楽活動に没頭し始めます。ライブ活動をしたり創作活動をしたり、彼にとってはそれが大きな生き甲斐となってきます。

それが高じてか、「男らしさ」を担ってきたタケシの力を借りることもなくなり、そして新たな存在を生み出すこともなく、比較的安定していた時期だったとタケシは話してくれました。そしてこの頃には、ケンジは幼い頃に生み出した「女の子」カナメのことも忘れていったようです。

しかし、カナメは消えたわけではありません。ケンジによって閉じ込められたカナメは、誰にも存在を知られることなく孤独な気持ちを背負って行き続けてきました。

ケンジ自身が生み出し、そして6人の他人格の中でも幼いときからバランスをとってきたカナメは、感情がケンジとリンクしていると言われています。ケンジが辛いときにはカナメも辛さを感じ、カナメが辛いときにはケンジもメンタルが不安定になったりもします。


ケンジにとって大切な友人は、カナメにとっても大切な存在でした。とはいっても、カナメにとっては直接話をするわけでもなく、一緒に時間を過ごすわけでもなく、ましてや「女性」である自分が男の姿で大切な人たちに接するということが屈辱と苦痛でいっぱいでした。そして何より、閉じ込められてしまったことによってカナメの意思は何もかも掻き消され、独りひっそりと誰にも知られることなく、ただ存在だけが生きるという状態でした。

そういった時間が長く長く続くことになります。