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ケンジの解離の事情 <女の子>

主人格であるケンジには、僕が把握している限りでは、

・ヤス
・カナメ
・タケシ
・ユウジ
・ミノル
・ケンイチ

の、6人の他人格がいます。

最初に僕にLINEで話しかけてきた子供ケンジが「ヤス」と呼ばれる他人格です。


解離性同一性障害の大半が、子供の頃に虐待を受けていたことがあるという話を書きましたが、ケンジの場合はそうではありません。

もしかすると、幼少の頃に両親が他界したことが子供ながらに精神的な苦痛だったのかもしれないと思い、ケンジ本人に話を聞いてみましたが、むしろ彼の気持ちには「自分をこの世に残してくれた両親に感謝している」という強い一心がありました。

親に恥じないように、
親が笑われないように、

まだ幼かった頃から、彼がいつも自分に言い聞かせていた言葉です。

「あの子には両親がいないから」

もし周りの人たちにそう言われてしまったら、自分をこの世に残してくれた親に申し訳ない、だからこそケンジは誰よりも強く生きようと努力をしてきました。

そして、守られる側よりも、人を守っていく側でありたいと、子供ながらにしてそういう自分を描くようになっていったケンジですが、上手くいかないこともありました。

友達と遊んだり、そういうアクティブな面では上手くこなせていても、大切な友達に優しく接するなど、内面的な部分ではどう渡っていけばいいのか、そういう部分を苦手としていたようです。

苦手なことは苦手で仕方がない、

一見、それで済むようなことかもしれませんが、ケンジにとってはそうではありませんでした。彼にとって自分が上手くできないことが、周囲からは「親がいないから」と見られてしまうことに繋がってしまう、そういう不安がいちばん大きくのし掛かっていたのです。


「女の子だったらいいのに」

女の子だったら、優しさや内面的な部分で友達と上手く接していけるのに…、そう強く思うようになったケンジは、次第に自身の代わりとなってくれる女の子を作り出していくようになったわけです。

活発な動きはケンジ自身が担当し、内面的な部分ではその女の子が担当し、そうやって役割分担をすることによって、彼は友達とのコミュニケーションをこなしていくようになりました。その「女の子」の名は『カナメ』といい、後に他人格として成長していくことになるわけです。

こうして"自身"の中で、男である「自分」と、作り出した「女の子」とで上手くバランスを取って歩んんでいたのですが、そのバランスも、だんだんと崩れだす時期が訪れてきたのでした。